今日の1科学【機織り】
『鶴の恩返し』では、恩返しに来た鶴は、鶴の姿に戻って、自分の羽を織り込んだ「鶴の千羽織(せんばおり)」を織ったとされています。
「機」とは布を織る木製の機械のことです。左右にペダルがあり、手前の横棒に腰かけて、右のペダルを踏むと、縦糸の奇数(1、3、5……)番目が上がり、偶数(2、4、6……)番目が下がります。そのあいだに横糸を巻いた杼(ひ)を右から左へ通し、筬(おさ)という縦糸と交差した「すだれ」のような部品で横糸を叩き固めます。続いて、左のペダルを踏むと、縦糸の上下が入れ替わるので、杼を左から右へ通し、筬で叩き固めます。機織りの音は「トントン、カラリ」と表現されますが、「トントン」とは筬で叩く音、「カラリ」とは杼を通す音なんですね。
ものすごく複雑な作業です。これが鶴にできたとはオドロキです。どうしてもやろうと思ったら、鶴に戻って自分の羽を抜き、人間になって機を織り……という往復変身を繰り返すしかないかも。しかも「千羽織」だから、千回も! 僕は昔話についても、どうしても現実的に考えてしまいます。