今日の1科学【公家の中将】
鉢かづき姫は、公家(くげ)の中将(ちゅうじょう)の屋敷で働くことになります。中将とは、どのくらい身分の高い人なのでしょうか。
中将とは、律令制度の官職の名前です。
律令制度とは、中国の唐にならって、西暦600年代の後半から整えられ始めた国のしくみです。701年の「大宝律令」で完成し、その後、少しずつ改定されていきました。
律令制度では、役人たちに「位階」という身分を与え、位階に応じた官職に任じました。位階には「正一位(しょういちい)、従一位(じゅいちい)、正二位、従二位……」と30段階があり、経験と業績に応じて上がっていきました。五位以上の役人が「貴族」や「公家」や「殿上人(てんじょうびと)」と呼ばれ、宮殿に上がることを許されました。
中将は官職の一つで、都を守る「近衛府(このえふ)」などの次官です。現在でいうと、警視庁副総監のような立場です。中将には、従四位の人が任ぜられるのが普通でしたが、三位の人が中将になることもあり、その場合は特別に「三位中将(さんみのちゅうじょう)」と呼ばれました。
『御伽草子』で、鉢かづき姫を雇ったのも「山蔭(やまかげの)三位中将」でした。この人は藤原山蔭という実在した人物で、生涯最高の位階は従三位でした。全30階のなかの6番目ですから、かなり身分の高い貴族だったと考えられます。