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さるカニ合戦 第3話

柳田理科雄のちょこっと解説!

柳田理科雄

今日の1科学【もう実がなってる】
カニが柿の種をまき、ハサミで脅して、芽を出させ、木に成長させ、実をならせ……と、マンガは昔話の通りに進んでいます。しかし僕は昔から、この展開に納得していません。

柿は、種子植物の仲間です。種子植物は、花を咲かせ、花粉がめしべにつくことで種ができ、それを包む実が作られます。『さるかに合戦』の柿も、実がなる前に花が咲いてもらわないと困るのです。

しかも柿は、めしべに同じ木の花の花粉がついても、実はなりません。これは、種の遺伝子をバラエティ豊かにするための仕組みで、自家不和合性(じかふわごうせい)といいます。だから、柿の木がカニに脅されて、急いで花を咲かせたとしても、そのときに別の柿の木に花が咲いていなければ、実はならないのです。

柿は5月ごろに花を咲かせます。カニが柿の超促成栽培に挑んだのも、そのころだったらいいのですが。